
「南海トラフ地震」に対する不安から耐震性を重視する方は多いですが、山形で家を建てる際は、雪害や水害といった地域特有のリスクにも十分な備えが必要です。
とくに豪雪や最上川の氾濫、土砂災害、近年新たな脅威となっている「熊」の出没など、ご家族を守るために想定すべき自然災害は多岐にわたります。
今回は山形県南を中心に、その他の幅広いエリアで多くのご家族の家づくりをサポートしてきた工務店『ミナガワ建設』が、山形で安全な住まいを実現するために知っておくべき災害リスクと、対策について解説します。
Contents
南海トラフ巨大地震の山形県への影響予測

内閣府防災情報が公表する最新の被害想定シミュレーションにおいて、山形県は「震度6弱以上」が想定される強震動域や、「津波による浸水」が想定される区域には該当しません。
現時点の科学的予測において、南海トラフ巨大地震によって山形県の住宅が「倒壊する」「津波で流される」といった直接的・物理的な被害は、極めて低いとされています。
〈参考〉内閣府|南海トラフ巨大地震モデル・被害想定手法検討会 > 地域震度分布図
しかし、直接的な被害がないからといって、「無関係」とは言い切れません。
私たちが備えるべきは「間接的な被害」です。
南海トラフ巨大地震が発生すれば、日本の大動脈である太平洋側の製造業や物流網は大きな打撃を受けます。
山形県に住んでいても、以下のような「社会インフラの麻痺」に直面する可能性が高くなります。
- サプライチェーンの寸断(建築資材、食料品、医薬品が届かない)
- 物流の完全停止
- エネルギー(電力・ガス)の供給不足
山形県民にとって南海トラフとは、「家が壊れる地震」としてではなく、「物流とインフラが長期間停止する経済事象」として備えるべき災害です。
万が一、電力供給がストップしても生活を維持できる「電力の自給自足(オフグリッド)」という考え方が、災害対策として注目されています。
〈関連ページ〉電気の自給自足をするオフグリッド生活には太陽光発電・蓄電池が必須|導入費用を抑える補助金も紹介
山形の住宅を脅かす「3大・自然災害」の現実

山形県で暮らすうえで、避けて通れない3つのリスクがあります。
1.豪雪被害
山形県は国内有数の豪雪地帯です。
雪の本当の恐ろしさは、家屋の倒壊よりも「除雪作業中の事故」にあります。
過去の豪雪被害のデータを見ると、実態が浮かび上がります。
- 「除雪作業中に屋根から転落し死亡」(73歳 男性、63歳 男性)
- 「除雪作業中に水路に転落し死亡」(76歳 男性、87歳 男性)
- 「崩壊した雪に埋もれ死亡」(70歳 男性)
- 「除雪作業中に発症(心疾患)し死亡」(82歳 女性)
これらからわかるように、被害者の多くは高齢者であり、「除雪」といった家や敷地のメンテナンス作業に起因しています。
山形での家づくりは、「雪の重みに耐える」(耐雪)だけでは不十分です。
将来、ご自身やご家族が高齢になったときに「危険な屋根の雪下ろしをしなくてもよい設計」や「敷地内での除雪負担を減らす配置」がいかに重要かがわかります。
とくに、車の雪下ろしや駐車スペースの除雪の手間を減らすには、車を建物内部に駐車できるビルトインガレージが効果的です。
ビルトインガレージの間取り実例について、こちらで紹介しています。
〈関連ページ〉ビルトインガレージ2台付き2階建ての間取り実例(40坪〜60坪)|ガレージの費用、坪数なども解説
2.最上川の氾濫
山形県の最上川は、豊かな恵みをもたらす一方、数々の氾濫の歴史を持っています。
直近では、令和2年7月の記録的な大雨により、最上川中流部を中心に広範囲で氾濫が発生しました。
堤防からの越水や溢水(堤防のないところから水があふれる)が各所で発生し、甚大な浸水被害をもたらしました。
「昔は氾濫したが、いまは治水工事で安全だ」と考えるのは危険です。
3.台風・豪雨がもたらす土砂災害の恐怖
最上川のような大河川の流域が洪水リスクにさらされる一方、山間部や崖地では「土砂災害」のリスクが高まります。
2013年 7月の台風・豪雨被害では、南陽市や白鷹町などで甚大な被害が発生しました。
山形県は山地が多く、平野部と山間部が隣接しています。
「川から離れた高台だから安全」とは限らず、背後の崖から土砂災害のリスクがあります。
なぜ山形で「熊対策」が住宅に必要なのか|迫りくる“第5のリスク”

これまでの「自然災害」の枠組みでは捉えきれない、熊による生物災害のリスクが、いま山形県の住宅地を脅かしています。
「またか」では済まない、駅や市街地への出没事例
2025年秋、山形県内ではこれまでの常識を覆す熊の出没が相次ぎました。
- JR新庄駅:JR新庄駅の構内に熊が出没
- 酒田市:住宅の「柿の木」に熊2頭が登っているのを、住民が通報
- 山形市:落合町、双月町、滑川地内などで目撃が相次ぐ
市街地での熊の目撃は、人間との「生活圏」が重なってしまった証拠です。
熊が市街地に出没する理由
なぜ、これほどまで熊の出没が深刻化したのでしょうか。
山形市では、令和7年11月11日現在で303件の目撃情報があり、10月だけで令和6年度・令和5年度の1年間の出没数を上回っています。
原因は、私たちが従来考えていた「山にエサがない(凶作)から里に来る」という単純なものではなくなりました。
むしろ温暖化の影響で、どんぐりなど熊のエサは「豊作」の年が増加傾向にあります。
- 豊作により、熊はエサを蓄えて冬眠し、多くの子熊を出産
- 結果として、熊の個体数自体が爆発的に増加
- 一方で、猟師は高齢化などで減少し、駆除が追いつかない
- 田んぼや畑といった緩衝地帯であった「里山」が全国的に減少し、熊の生息地である森林と人間の生活圏が直結している
増えすぎた熊が、緩衝地帯の減少を受けて人里を“新たな生息地”として認識し始めているのが実状です。
山形県南を中心にその他幅広いエリアで、災害に強い注文住宅をご検討中の方は、ぜひミナガワ建設へお問い合わせください。
地域の特性や最新の災害リスクを踏まえた土地探しはもちろん、熊対策と防犯性を両立させる設計・プランニングまで、ご家族の安全を第一に考えた「守りの住まいづくり」を全力でサポートいたします。
災害から命と財産を守る「山形での家づくり」4つのポイント

山形の3大自然災害と、第4のリスクである「熊」の脅威からご家族の命と財産を守るため、新築住宅で実践すべき4つのポイントをご紹介します。
1.土地選び
「豪雪」「洪水」「土砂災害」のリスクに対し、新築時に取るべき対策が「ハザードマップの確認」です。
洪水ハザードマップを例に見ると、「赤い線にそって土砂くずれが起きそうな崖の場所」や「浸水想定区域」が色分けで示されています。
ハザードマップとは、「過去の悲劇が繰り返される可能性が高い場所」を科学的に予測した「未来の災害予測図」です。
「区域外へ早期避難」と記されている場所は、「家を建てる場所」として選ぶべきではない、と認識する必要があります。
2.豪雪に耐える構造設計
山形県では「除雪作業中の死亡事故」を防ぐ家づくりが求められます。
建築基準法上の積雪量をクリアするだけでなく、十分な安全マージンを持たせた耐雪構造が不可欠です。
ご高齢になっても危険な屋根の雪下ろしが不要になる「無落雪屋根(フラットルーフ)」の導入をおすすめします。
3.「熊」と「防犯」を両立する“侵入させない”住宅設計
近年増加している家屋侵入を防ぐためには、建物のハード面での対策と、熊などを寄せ付けない環境づくりが欠かせません。
「対熊」と「対人」の両方に効果を発揮する、住宅設計のポイントは以下のとおりです。
- 実のなる木(柿、栗など)を植えない、または伐採する
- ゴミの屋外保管は避け、置く場合は「鍵付きの頑丈なストックヤード」に入れる
- オートロックや補助錠の活用。とくに勝手口や物置の施錠が大切
- 1階を「高窓」中心に設計し熊の侵入経路を遮断。同時に外からの視線も防ぎ、防犯性も高める
4.シェルターとしての機能|災害後の「在宅避難」を支える設備
南海トラフ地震の影響による間接的なインフラ停止や、豪雪・土砂災害による「地域的孤立」に備え、家そのものが「シェルター」として機能する必要があります。
- 停電対策:「太陽光発電+蓄電池」
- 断水対策:「エコキュートや貯水タンク」
- 物流停止対策:「食料を備蓄できるパントリー」
設計段階から取り入れることで、ライフラインが途絶えても数日間はご自宅で安全に過ごせる「在宅避難」が可能です。
山形県南を中心にその他幅広いエリアで、注文住宅をご検討中の方は、ぜひミナガワ建設へお問い合わせください。
太陽光発電や蓄電池、パントリーなどを設計段階から無理なく組み込み、万が一のときもご家族のライフラインを守る「在宅避難」が可能な住まいをご提案します。
まとめ
山形県での家づくりでは、豪雪・洪水・土砂災害、近年増加傾向にある熊被害など、発生頻度の高い災害への備えが大切です。
しかし、これらは適切な土地選びと住宅設計によって、十分に回避・軽減できる課題でもあります。
漠然とした不安を解消するために、地域のリスク特性を熟知した家づくりを計画しましょう。
